親が亡くなり、実家の土地を相続することになった際、多くの相続人が直面するのが「どうやって分けるか」という問題です。
特に兄弟姉妹がいる場合、「とりあえず平等に」と1つの土地を複数人で所有する「共有名義」を選んでしまうケースが後を絶ちません。
しかし、不動産業界において共有名義はトラブルの火種そのものです。
本記事では、土地の相続手続きの基本から共有名義に潜むリスク、そして2024年から義務化された相続登記の注意点まで詳しく解説していきます。
目次
土地を共有名義で相続するとはどんなこと?
まずは、「土地を共有名義で相続する」という行為について、基本的な知識を次の3つの視点から解説します。
- 共有名義の基礎知識
- 相続登記の基本的な流れ
- なぜ多くの人が「共有名義」を選んでしまうのか
共有名義の基礎知識
共有名義とは、「一つの不動産(土地・建物)を、複数の人が割合を決めて所有すること」です。
例えば、土地を兄弟3人で均等に相続した場合、各々がその土地に対して「3分の1」の所有権を持つことになります。
この各人が持つ権利の割合を「共有持分」、あるいは単に「持分」と呼びます。
持分は、「割合に応じて土地を物理的に所有する」ことではなく、あくまで「土地全体に対して権利を持つ」という、目に見えない権利であることには注意が必要です。
土地の相続登記の基本的な流れ
土地を相続する際は、法務局で「相続登記」を行う必要があります。
これは、登記簿上の土地の所有者を被相続人(土地を遺した人)から相続人に変える手続きです。
▼相続登記の流れ
- 遺言書の確認: 遺言書があればそれに従う。
- 相続人の調査: 戸籍謄本等を集め、法定相続人を確定させる。
- 遺産分割協議: 誰がどの土地をどの割合で継ぐかを話し合う。
- 登記申請: 法務局へ申請書を提出。
なお、上記の流れにおいては専門的な知見が必要になる場面も多いため、司法書士に依頼して全て行ってもらうのが一般的です。
なぜ多くの人が共有名義を選んでしまうのか
共有名義での土地相続は、後述するような数々のリスクを伴う危険な行為です。
しかし、多くの方が共有名義での相続を選んでしまうのには、以下のような理由があります。
- 代々受け継いできた土地を売る決心がつかない
- 特定の誰かが継ぐことに反対意見が出た。
- 代償分割(後述)のための現金が用意できない。
こうした事情を踏まえて、その場しのぎの「一時的な公平性」を求めた結果、「とりあえず共有名義にしておこう」という結論に至ってしまうのです。
そしてこの妥協が、数年後、数十年後の大きなトラブルを招くことになります。
土地を共有名義で相続する5つの大きなリスク
ここからは、土地を共有名義で相続した際に抱える代表的な5つのリスクを詳しく見ていきましょう。
- 自由な売却・活用ができない
- 管理費・固定資産税の押し付け合い
- 二次相続による「持分の細分化」
- 共有持分が第三者に差し押さえられるリスク
- 共有者同士の関係性の悪化
リスク①自由な売却・活用ができない
共有名義の土地において、最も大きな制約は「全員の同意がなければ売却や大規模な造成ができない」ことです。
そもそも、共有名義の不動産を活用する際には、以下の通り「共有者が単独で(自分の持分だけで)行える行為かそうでないか」という点が民法で規定されています。
▼共有名義の不動産に対する行為
| 行為の種類 | 具体的な内容 | 必要な同意 |
| 保存行為 | 建物のの屋根の修繕、不法占拠者の排除など | 単独で可能 |
| 管理行為 | 短期賃貸借契約の締結、建物の一般的なリフォーム | 持分割合の過半数 |
| 変更行為(軽微) | 砂利道のアスファルト舗装など、形状等の軽微な変更 | 持分割合の過半数 |
| 変更行為(重大) | 売却、建物の建て替え、大規模な造成・増改築 | 全員の同意 |
上記の表に照らし、例えば兄が「土地を売りたい」と思っても、弟が「思い入れのある土地を売るわけにはいかない」と主張すれば、土地全体の売却は不可能になります。
このように、共有者同士の意見の違いにより、せっかく受け継いだ土地を売ることも活用することもできないという事態に陥るのです。
リスク②管理費・固定資産税の押し付け合い
土地を相続した場合、固定資産税や都市計画税といった税金の支払いが必須になります。
それらの税金の納付書は、通常「共有者の代表者」宛に届きますが、自治体は「誰が払ってもいいから、とにかく全額払ってください(連帯納付義務)」というスタンスです。
そのため、時間が経つにつれて「自分は使っていないから税金など払いたくない」「お金を払ってほしいのに連絡が取れない」といった共有者が現れ、代表者が泣き寝入りして全額を負担するケースが頻発します。
リスク③二次相続による「持分の細分化」
土地の共有者の1人が亡くなると、その持分はさらにその子供たちへ相続されます。
例えば、亡くなった共有者に子どもが2人いた場合、ただでさえ土地の所有権割合に過ぎない持分が、2人分に分割されて相続されてしまうのです。
これを数世代繰り返すと、一つの土地に数十人の所有者が存在することになります。
顔も合わせたことがない遠い親戚が共有者になれば、もはや全員の同意を得ることは物理的に不可能となり、土地は「塩漬け状態」となってしまうでしょう。
リスク④共有持分が第三者に差し押さえられるリスク
もし土地の共有者の1人が借金を抱え、返済が滞った場合、その人の「持分だけ」が債権者によって差し押さえられ、競売にかけられることがあります。
こうした場合、多くは兄弟同士での共有だったはずが、「兄弟+債権者(持分を差し押さえたお金の貸主)」での共有状態という歪な状況に変化するのです。
見知らぬ買取業者や第三者がいきなり「新しい共有者」として現れる困惑と恐怖は、共有名義ならではのリスクです。
リスク⑤共有者同士の関係性の悪化
ここまでお伝えしてきたリスクは、いずれも共有者各々の意見や要望・事情の違いや対立から生まれます。
上記でご紹介したような状況になれば、土地の塩漬け化や金銭的な負担を被るだけでなく、共有者同士の関係性も著しく悪化してしまうでしょう。
「うちは仲が良いから大丈夫」と考えていても、年月がたつにつれて表面化する共有名義の問題に巻き込まれるうち、もともとは仲の良かった兄弟や親族同士が絶縁状態になる可能性も十分に考えられます。
あえて共有名義で土地を相続するメリットは?
前章では土地を共有名義で相続するリスクをお伝えしてきましたが、あえて共有にするメリットを挙げるならば以下の2点のみです。
- 売却時の特別控除の重複: 居住用財産を売却する場合、3,000万円の特別控除が各共有者に適用されるため、節税になるケースがある。
- 相続時の資金負担の先送り: 土地を物理的に分けるための測量費や、特定の1人が単独名義で相続する際に他の共有者に代償金を支払うための現金が今すぐ用意できない場合、資金調達のための時間を稼げる。
しかしこれらのメリットは、限定された状況下でのみ一定の恩恵を受けられるもので、数々のリスクを帳消しにできるものではありません。
むしろ、将来発生するトラブルや管理コストに比べれば微々たるものであることがほとんどです。
土地の共有名義を避けるための3つの分割方法
土地の相続が発生した際、共有を避けるための分割方法は主に次の3つです。
- 現物分割
- 換価分割
- 代償分割
分割方法①現物分割
現物分割とは、土地を物理的に分割(=分筆)し、相続人全員で分ける方法のことです。
分筆した土地は各共有者の単独所有となるため、その後は売却も活用も共有者1人ひとりが自由に行えるようになります。
ただし、建物を土地のように分割することはできないため、原則的に土地と建物を一緒に相続した場合、現物分割は極めて難しいという点には注意が必要です。
分割方法②代償分割
代償分割とは、長男など特定の1人が土地を単独で相続し、他の相続人に相応の現金(=代償金)を支払う方法のことです。
一族で受け継いできた土地を手放すことなく、共有名義という厄介な状態を避けることができるため非常に有効な手段といえます。
ただしこの方法を選ぶには、土地を単独で相続する相続人をスムーズに決定し、その上でその相続人に代償金を支払うための現金があることが条件になります。
分割方法③換価分割
換価分割とは、相続した不動産全体を売却し、その代金を相続人同士で分け合う方法のことです。
金銭的な見返りが大きく公平性も高いうえ、その後の土地の管理コストや税金の支払い義務も一切不要になります。
しかし、土地そのものを手放すことになるため、相続人全員が納得する形での合意形成は必須です。
すでに共有名義で相続してしまった場合の解決策
最後に、すでに遺産分割協議が終わり、実際に共有名義で土地を相続してしまった後の解決策として、次の3つをご紹介します。
- 共有者同士での持分売買
- 共有物分割請求(裁判所を通じた解決)
- 共有持分のみの売却
解決策①共有者同士での持分売買
まず、他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう、あるいは逆に自分が買い取って単独名義にするという方法が存在します。
普段から良好な信頼関係を築けている場合、互いの思惑さえ一致すれば非常に円満な解決策となるでしょう。
その際は、売買の価格などで揉めないよう、慎重に交渉を進めることが大切です。
なお、売買ではなく放棄や贈与の場合は「もらった側」に贈与税が課されるケースもあるため注意しましょう。
解決策②共有物分割請求(裁判所を通じた解決)
土地の共有者同士で売却や活用の要望が対立し、揉め事が長引いた場合は、裁判所に対して共有状態の解消を求める「共有物分割請求」という手段を取ることも可能です。
強制的に共有状態を解消できますが、自分が望む形の分割方法になるとは限らない※ため、この点は事前に認識しておきましょう。
※例:土地を自分の単独所有にしたいのに、競売によって強制的に売却されるなど。
ただし、金銭的・精神的な負担は大きく、また「裁判沙汰」となることで共有者同士の関係性に大きな亀裂が入るため、あくまで最後の手段として考えておくことをおすすめします。。
解決策③自分の持分のみ売却
土地全体ではなく、自分の持分のみなら誰の同意も得ずに売却することが可能です。
そのため、「土地の共有問題に疲れてしまった」といった理由で持分の売却を選択する方が増えています。
持分の売却時には、「買取業者に持分を売却する」「仲介業者に持分の買主仲介を依頼する」という2つの方法からどちらかを選ぶことが一般的です。
| 利用する業者 | 買取業者 | 仲介業者 |
| ビジネスモデル | 不動産業者自身が共有持分を売主から直接買い取る。 | 共有持分の売主と買取を希望する買主(投資法人や投資家など)を業者が仲介する。 |
| メリット | ・売却までのスピードが早い。 ・複雑な権利関係を抱える案件にも対応可能。 | ・買取業者より高額かつ好条件で売却できるケースが多い。 ・他の共有者とトラブルになりにくい。 |
| デメリット | ・売却金額が市場価格よりも安い傾向にある。 ・売却後に他の共有者とのトラブルになる可能性がある。 | ・契約完了までに2~4週間ほどの期間が必要になることが多い。 ・買取業者に比べて専門業者自体の数が少ない。 |
上記の特徴を考慮し、多少安くても持分を手早く現金化したい方は買取業者、可能な限り高額・好条件で売りたい方は仲介業者を選ぶことをおすすめします。
なお、当社センチュリー21中央プロパティーは、共有持分専門の仲介業者として多くのお客様の持分売却に携わってまいりました。
専任のプロと社内弁護士を揃えた万全の体制で、トラブルなくスムーズな持分売却をお手伝いします。売主様からの仲介手数料は一切いただいておりませんので、ぜひ一度お声がけください。
まとめ
土地を共有名義で相続することは、問題の解決ではなく「問題の先送り」に過ぎません。
時間が経てば経つほど共有者は増え、関係は希薄になり、土地の処分は不可能に近づいていきます。
そのため、土地の相続が発生した場合は換価分割や代償分割を検討し、将来に禍根を遺さないことを意識しましょう。
もし、現在すでに共有名義で土地を相続してしまい、共有者同士の意見対立などでお悩みの方は、当社センチュリー21中央プロパティーにご相談ください。
共有持分のトラブル解決・売却に長年関わってきた知見と実績から、お客様のご要望に合わせた最適な解決方法をご提案いたします。

