不動産相続という大きな転換点に立つと、まず頭をよぎるのは「この家や土地、いったい相続税はいくらかかるのか?」という不安ではないでしょうか。
相続税を算出するための「評価額」は独自のルールに基づいて計算されており、多くの場合、市場価格よりも低く抑えられています。
本記事では、実際の相続税額の基準となる「相続税評価額」の基本から2024年の法改正(マンション評価ルール)、そして税額を劇的に下げる特例まで、不動産実務の視点から徹底解説します。
目次
不動産の「相続税評価額」の基本
不動産における「相続税評価額」とは、国税庁の定めに基づいて算出される不動産の価格のことで、相続税を算出する際の基準となります。
しかし、不動産の世界には相続税評価額以外にも複数の価格が同時に存在する「一物四価(いちぶつよんか)」という考え方があり、相続税を把握するためにはこの一物四価の考え方を理解することが重要です。
- 一物四価の比較表
- なぜ相続税評価額は公示価格や時価より低いのか?
基本①一物四価の比較表
一物四価といわれる不動産の価格は、以下の表の通りです。
| 名称 | 決定機関 | 目的 | 目安(公示価格を100とした場合) |
| 公示価格 | 国土交通省 | 土地取引の指標 | 100% |
| 実勢価格(時価) | 市場(売買当事者) | 実際の取引 | 約110%~120% |
| 相続税評価額(路線価) | 国税庁 | 相続税・贈与税の計算 | 約80% |
| 固定資産税評価額 | 市町村(都税事務所) | 固定資産税の計算 | 約70% |
基本②なぜ相続税評価額は公示価格や時価より低いのか?
相続税評価額が公示価格および時価より低く設定されている最大の理由は、「納税者の保護」です。
不動産相場は、日々目まぐるしく変動しています。
そうした環境の中で評価額を時価ギリギリに設定していた場合、相続が発生した瞬間に相場が下落すると、本来の価値以上の税金を払わされるリスクが生じます。
そのため、相続税評価額をあらかじめ公示価格や時価よりも低く設定しておくことで、公平な課税を維持しているのです。
この「時価と評価額のギャップ」こそが、現金で持っているよりも不動産で持っている方が相続対策に有利だと言われる根本的な理由といえます。
土地の相続税評価額を計算する2つの方法
前章で、相続税評価額は「公示価格のおよそ80%」とお伝えしましたが、実際にはその土地がどこにあるかによって「路線価方式」および「倍率方式」という方式のいずれかで計算されます。
- 路線価方式
- 倍率方式
① 路線価方式(市街地などで使用)
路線価方式は、都市部の多くで採用されている方式で、「道路に面した土地の1㎡あたりの価格(=路線価)」を基準に以下の通り計算されます。
- 計算式
路線価×面積×各種補正率=評価額 - 路線価図の見方
国税庁の「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」で確認可能。
例:道路に「300C」と書かれていれば1㎡あたり300,000円 - 補正率の重要性
「奥行が極端に長い」「形が歪(不整形地)」「崖地がある」といったマイナス要因がある場合、補正率によって評価額を下げることができる。
なお、土地が借地の場合は地域ごとの借地権割合(土地に占める借地人の権利割合で、概ね60%~70%が一般的)が考慮されます。
② 倍率方式(路線価がない地域で使用)
倍率方式は、郊外や農村部など路線価が設定されていない地域で用いられる方式で、以下の通り計算されます。
- 計算式:
固定資産税評価額×地域ごとの倍率=評価額
固定資産税評価額は、毎年送られてくる「固定資産税の納税通知書」に同封されている課税明細書で確認可能です。
倍率は、路線価と同じく国税庁の公式サイトで公開されています。
建物の相続税評価額の計算方法
建物(家屋)の評価は土地に比べて非常にシンプルで、自宅と貸付用の建物でそれぞれ次のように計算されます。
- 自用家屋(自宅)の場合
- 貸付用(アパート・マンション)の場合
①自用家屋(自宅)の場合
自分の住んでいる家の場合、評価額は以下の通りです。
- 固定資産税評価額×1.0=評価額
つまり、市町村が算出した固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります(建築費の50%〜60%程度になることが一般的)。
②貸付用(アパート・マンション)の場合
他人に貸している建物の場合は、自由に使うことができない権利(借家権)分を差し引くことができます。
- 計算式
固定資産税評価額×(1-借家権割合※1×賃貸割合※2)=評価額
※1全国一律で30%
※2空室でない床面積
上の式に照らし、自宅として所有するより賃貸に出している方が建物の評価額が低くなるため、結果として節税効果を期待できます。
法改正によるマンションの相続税評価額の変遷
ここでは、2024年(令和6年)1月から施行された、マンションの相続税評価に関する大きなルール変更(「タワマン節税」への規制強化)を次の2つの視点から解説します。
- 改正の背景
- 新しい計算ルールの概要
改正の背景
以前までは、高層マンションの時価(売れる価格)と相続税評価額(計算上の価格)の乖離があまりにも大きく「時価の2割〜3割」程度の評価で済むケースが散見されました。
これを国税庁が「不公平」と判断し、是正に動いた結果が2024年のタワマン節税への規制強化です。
新しい計算ルールの概要
新ルールでは、建物の築年数や総階数などを考慮した「区分所有補正率」という新たな係数が導入されました。
具体的には、高層マンションの相続税評価額が市場価格の60%以上に達するよう調整されるようになり、これによって多くの都市部マンションの相続税評価額は従来より1.5倍〜2倍程度上がることになりました。
こうした点を踏まえ、高層マンションの相続を控えている方は従来の計算式では過小評価になってしまうリスクがあるため、税理士による最新のシミュレーションが必要です。
相続税評価額を下げる「小規模宅地等の特例」とその他のポイント
相続税対策において、もっとも強力な武器と言えるのが「小規模宅地等の特例」です。
これは、亡くなった人が住んでいた土地や事業をしていた土地について、以下の要件を満たせば評価額を劇的に減額できる税制上の特例です。
▼小規模宅地等の特例の要件
- 特定居住用宅地等:自宅の土地(330㎡まで)の評価額を80%減額
- 貸付事業用宅地等: アパート・駐車場等の土地(200㎡まで)の評価額を50%減額
とくに減額の幅が大きいのは自宅の場合で、配偶者であれば無条件に・配偶者以外の同居親族でも「相続税の申告期限までその家に住み続ける」などの条件を満たすことで、土地の評価額が8割もカットされます。
また、「家なき子特例」といって、亡くなった人に配偶者も同居親族もいない場合に、3年以上自分の持ち家に住んでいない親族(賃貸暮らしなど)がその家を相続すれば、小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります。
なお、この特例は土地に適用されるものであり、建物の評価額には適用されないためその点は注意しましょう。
その他不動産の相続税評価額を下げるためのポイント
上記の特例以外に、不動産の相続税評価額を下げるための3つのポイントをご紹介します。
- 賃貸物件にする
- 「使いにくい土地」であることを正しく主張する
- 税理士や不動産鑑定士に依頼する
ポイント①賃貸物件にする
土地の上に賃貸物件を建てて貸している場合、その土地は「貸家建付地」となり、評価額が下がります。
具体的な減額幅は借地権割合や賃貸割合によって変動しますが、小規模宅地等の特例と併用できれば非常に大きな節税となります。
ポイント②「使いにくい土地」であることを正しく主張する
土地の相続においては、次のような「使いにくい土地」であることが認められれば、相続税評価額の減額につながることがあります。
- 不整形地: いびつな形の土地。
- 私道がある: 敷地内に通り抜けの道路がある場合。
- セットバック: 道路幅を確保するために将来削らなければならない部分がある場合。
ただしケースによって減額の幅は異なるため、専門家への相談が必要です。
ポイント③税理士や不動産鑑定士に依頼する
相続税評価額の計算を自分で行う場合、抜け漏れや不備を見越して高めに算出しがちになります。
しかし不動産の相続に強い税理士であれば、各種補正率を緻密に適用し、評価額を最大限下げるノウハウを持っています。
また、特殊な土地(共有持分、底地など)の場合は、不動産鑑定士による鑑定評価を採用することで、路線価よりもさらに低い価格が認められるケースもあります。
いずれも依頼報酬は必要になりますが、評価額減額の可能性と税務処理の手間を一任できる利便性を踏まえ、相続発生時には税理士や不動産鑑定士への依頼をおすすめします。
まとめ
不動産の相続税評価は、実際の売却価格である「時価」とは全く別物です。
まずは路線価や固定資産税評価額をベースに、ご自身の不動産が今どの程度の「税務上の価値」を持っているかを把握しましょう。
しかし、2024年のマンションの相続税評価額改正に見られるように、税制は時代とともに変化し、これまでの常識が通用しなくなることもあります。
特に「小規模宅地等の特例」のような強力な節税策は、適用条件が細かく判断を誤ると大きな損失に繋がります。
「うちはそんなに資産がないから大丈夫」と思っていても、不動産価格の高騰により、意外にも相続税の納税対象になるケースが増えています。
手遅れになる前に、一度プロの視点からシミュレーションを受けることが、大切な資産を守る最善の策と言えるでしょう。
当社センチュリー21中央プロパティーは、長年に渡って不動産の相続に関する多くのトラブルを解決に導いてまいりました。
相談は無料ですので、相続でお困りの方はぜひお気軽にご連絡ください。

