実家を相続したものの、誰も住む予定がなく「空き家」として放置してしまうケースが増えています。
維持管理の手間や固定資産税の負担に加え、売却時に発生する税金も大きな悩みどころではないでしょうか。
一定の要件を満たした空き家を売却する場合、譲渡所得から最高3,000万円が控除される「空き家特例」を活用すれば、手元に残る現金を大幅に増やせる可能性があります。
本記事では、特例の仕組みや令和6年の法改正ポイント、具体的な手続き方法について詳しく解説します。
目次
相続空き家の3,000万円特別控除(空き家特例)とは
相続によって取得した被相続人の居住用家屋(実家)やその敷地等を売却した際に、一定の要件を満たすことで適用される特例措置です。
正式名称を「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。
通常、不動産を売却して利益(譲渡所得)が出ると、その利益に対して約20%(所有期間5年以下なら約39%)の税金がかかりますが、この特例を利用することで税負担を大幅に軽減、あるいはゼロにすることが可能です。
譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度
この特例の最大の特徴は、譲渡所得の金額から最高で3,000万円までを差し引ける点にあります。
不動産の売却益が3,000万円以下であれば、譲渡所得はゼロとなり、所得税や住民税は発生しません。
相続した実家が古く、建物の価値がほとんどない場合でも、土地の価格が上昇していて売却益が出るようなケースでは、この控除が非常に大きな効果を発揮します。
ただし、自動的に適用されるわけではなく、確定申告の手続きを経て初めて認められる制度であるため、事前の準備が欠かせません。
特例を適用した場合の節税効果シミュレーション
実際に特例を適用した場合としなかった場合で、どれくらい税額に差が出るのかを見てみましょう。
ここでは、相続した空き家を4,000万円で売却し、取得費や譲渡費用を差し引いた純粋な利益(譲渡所得)が1,000万円だったと仮定します(所有期間5年超)。
| 特例適用なし | 特例適用あり | |
| 譲渡所得 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 特別控除額 | 0円 | ▲3,000万円 |
| 課税譲渡所得 | 1,000万円 | 0円 |
| 税率 (約20%) | × 20.315% | × 20.315% |
| 支払う税金 | 約203万円 | 0円 |
このように、特例を利用することで約200万円もの税金を節約できる可能性があります。
手元に残る資金が大きく変わるため、要件に該当するかどうかを必ず確認しましょう。
【令和6年1月~】法改正による空き家特例の拡充と変更点
令和5年度の税制改正により、空き家特例の適用期限や要件に以下の変更がありました。
- 特例の適用期間が令和9年(2027年)まで延長
- 売買契約後の「譲渡翌年の2月15日」までの取り壊しでも適用可能に
- 相続人が3人以上の場合の控除額は2,000万円に変動
この改正は令和6年(2024年)1月1日以降の譲渡から適用されており、従来よりも使い勝手が向上した部分と、注意が必要な部分があります。
これからの売却を検討している方は、最新のルールを把握しておくことが重要です。
変更点①:特例の適用期間が令和9年(2027年)まで延長
当初、この特例措置は令和5年12月31日で終了する予定でしたが、空き家問題の解消を促進するため、適用期間が4年間延長されました。
これにより、令和9年(2027年)12月31日までに売却した案件であれば、特例の対象となります。
期間に余裕ができたとはいえ、相続開始から3年目の年末までという個別の期限は変わらないため、早めの行動が望ましいことに変わりはありません。
変更点②:売買契約後の「譲渡翌年の2月15日」までの取り壊しでも適用可能に
これまでは、売買契約を結んで引き渡す「前」に、耐震改修を行うか、建物を解体して更地にする必要がありました。
しかし、今回の改正により、譲渡の時から譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、耐震改修または除却(解体)を行えば特例が適用されることになりました。
つまり、買主に物件を引き渡した後に、買主側や売主側が解体工事を行っても要件を満たせるようになり、売却活動の自由度が大幅に高まっています。
変更点③:相続人が3人以上の場合の控除額は2,000万円に変動
一方で、控除額の上限については一部縮小されました。
被相続人の家屋等を相続した相続人の数が3人以上の場合、特別控除額は一人あたり最大3,000万円から2,000万円に引き下げられます。
相続人が多数いるケースでは、それぞれの節税額が変わってくるため、遺産分割協議の段階から税額シミュレーションを行っておくことをおすすめします。
空き家特例を受けるための3つの主要な適用要件
空き家特例を受けるためには、人・家屋・譲渡における、以下の厳しい要件をすべてクリアする必要があります。
- 相続開始の直前まで被相続人が一人で住んでいたこと
- 昭和56年5月31日以前に建築された戸建てであること
- 相続開始から3年目の12月31日までに売却すること
要件①:【人】相続開始の直前まで被相続人が一人で住んでいたこと
原則として、亡くなった被相続人が相続開始の直前までその家屋に一人で居住していたことが必要です。
同居していた家族がいる場合や、配偶者と共に住んでいた場合は対象外となります。
ただし、被相続人が老人ホームや介護施設に入所していたために空き家になっていた場合でも、一定の要件(要介護認定を受けていた、家財道具を保管していた等)を満たせば、特例の対象として認められるケースがあります。
要件②:【家屋】昭和56年5月31日以前に建築された戸建てであること
対象となる建物は、昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された「旧耐震基準」の家屋に限られます。
また、マンションなどの区分所有建物は対象外であり、一戸建てであることが条件です。
さらに、売却時には現行の耐震基準に適合していることが求められるため、そのまま売る場合は耐震リフォームが必要となり、そうでない場合は更地にして売却するのが一般的です。
要件③:【譲渡】相続開始から3年目の12月31日までに売却すること
特例を受けるには、相続の開始があった日(亡くなった日)から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡しなければなりません。
加えて、売却代金(譲渡対価)が1億円以下であることも条件です。
この1億円という判定は、固定資産税精算金なども含めた総額で行われるほか、分割して売却した場合でも合算して判定されるため注意しましょう。
相続空き家特例の適用申請に必要な書類リスト
空き家特例の適用を受けるためには、確定申告書に加えて以下の証明書類を添付する必要があります。
- 被相続人居住用家屋等確認書
- 確定申告書および譲渡所得の内訳書
- 売買契約書の写しと登記事項証明書
- 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
書類の取得には時間がかかるものもあるため、余裕を持って準備を進めましょう。
書類①:被相続人居住用家屋等確認書
この特例を利用する上で最も特徴的な書類が「被相続人居住用家屋等確認書」です。
これは、売却した物件が空き家特例の要件を満たしていることを、物件所在地の市区町村長が証明するものです。
売買契約書や電気・ガスの閉栓証明書、解体前後の写真(更地渡しの場合)などを揃えて自治体の窓口へ申請し、交付を受けます。
書類②:確定申告書および譲渡所得の内訳書
税務署へ提出する基本となる書類です。
「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表)」には、売却した不動産の所在地や面積、売却金額、取得費、譲渡費用などを詳しく記載します。
特例の適用を受ける旨を申告書に明記することを忘れないようにしましょう。
書類③:売買契約書の写しと登記事項証明書
売却の事実と日付を証明するために、売買契約書のコピーを提出します。
また、登記事項証明書(登記簿謄本)は、建物の建築時期や相続による取得、売却による所有権移転の事実を確認するために必要です。
これらは法務局で取得するか、手元の契約書をコピーして用意します。
書類④:耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
建物を解体せずに、家屋付きのまま売却した場合に必要となる書類です。
譲渡の時点でその建物が耐震基準を満たしていることを証明するもので、建築士や指定確認検査機関などに依頼して発行してもらいます。
更地にして売却した場合はこの書類は不要ですが、代わりに解体の事実を証明する書類が必要となります。
【特例適用までの段取り】不動産売却から確定申告までの流れ
相続発生から空き家特例の適用を受けるまでには、以下の手順を踏む必要があります。
- 相続登記を行い不動産の名義を変更する
- 不動産会社へ査定を依頼し媒介契約を結ぶ
- 買主を見つけて売買契約を締結する
- 建物の取り壊しまたは耐震リフォームを行う(※必要な場合)
- 管轄の市区町村へ「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を申請する
- 必要書類を揃えて税務署で確定申告を行う
スムーズに進めるための全体像をステップごとに確認していきましょう。
Step1.相続登記を行い不動産の名義を変更する
まずは不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する「相続登記」を行います。
令和6年4月1日からは相続登記が義務化されており、放置すると過料の対象にもなるため、速やかに手続きを済ませましょう。
遺産分割協議を行い、誰がどの不動産を相続するかを確定させます。
Step2.不動産会社へ査定を依頼し媒介契約を結ぶ
名義変更と並行して、不動産会社に査定を依頼します。
相続不動産は権利関係が複雑だったり、建物が古かったりと特殊な事情を含むことが多いため、相続案件の実績が豊富な会社を選ぶのがポイントです。
※ちなみにセンチュリー21中央プロパティーでは、不動産鑑定士とAIによる「ダブル査定」を導入しており、24時間以内に客観的根拠に基づいた高額査定を提示することが可能です。
信頼できる会社が見つかったら、売却活動を依頼する媒介契約を締結します。
Step3.買主を見つけて売買契約を締結する
購入希望者が見つかり、条件がまとまれば売買契約を締結します。
この際、契約書には特例適用のために必要な条項(解体の条件や時期など)を盛り込んでおくと安心です。
売却価格が1億円を超えないように注意しつつ、契約を進めます。
Step4.建物の取り壊しまたは耐震リフォームを行う(※必要な場合)
更地渡しで契約した場合は、決済(引き渡し)までに建物の解体工事を行います(法改正により、引き渡し後の解体でも認められるケースが増えましたが、基本的には契約内容に従います)。
家屋付きで売る場合は、耐震基準を満たすためのリフォーム工事や検査を実施します。
この工程の実施証明(工事請負契約書や領収書など)は、後の申請で必要になるため大切に保管してください。
なお、解体費用やリフォーム費用が心配な方もいらっしゃるかもしれませんが、センチュリー21中央プロパティーなら、通常は売主様負担となる残置物撤去や測量等の諸費用を全て0円で対応しております。
Step5.管轄の市区町村へ「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を申請する
売却(引き渡し)が完了したら、必要書類を揃えて市区町村へ「被相続人居住用家屋等確認書」の申請を行います。
申請から交付までは通常1〜2週間程度かかります。
確定申告の時期直前になると窓口が混み合うため、早めに取得しておきましょう。
Step6.必要書類を揃えて税務署で確定申告を行う
売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に、所轄の税務署で確定申告を行います。
交付された確認書や売買契約書の写しなどを添付し、申告書を提出して納税(または還付の手続き)を済ませれば完了です。
相続空き家の3,000万円特別控除を検討する際の注意点
相続空き家の3,000万円特別控除を検討する際の注意点は、主に以下の通りです。
- 「取得費加算の特例」とは選択適用(併用不可)
- 老人ホーム入居時は適用条件が厳格化される
- 店舗・事務所などの併用住宅は「居住部分のみ」対象
注意点①:「取得費加算の特例」とは選択適用(併用不可)
相続税を支払った人が不動産を売却する場合、「取得費加算の特例」という別の減税措置があります。
しかし、空き家特例と取得費加算の特例は重複して適用することができません。
どちらか一方を選択する必要があるため、それぞれの特例を使った場合の税額をシミュレーションし、有利な方を選ぶようにしましょう。
注意点②:老人ホーム入居時は適用条件が厳格化される
被相続人が老人ホームに入所していた場合でも特例は適用可能ですが、要件が細かく設定されています。
具体的には、「入所時に要介護認定等を受けていたこと」や、「入所後に家屋が事業用や貸付用に使われていなかったこと」などが求められます。
単に別居していただけでは認められないため、入所時の状況や家の利用実態を証明できる準備が必要です。
注意点③:店舗・事務所などの併用住宅は「居住部分のみ」対象
この特例はあくまで「居住用家屋」が対象です。
店舗や事務所と自宅が一体になった併用住宅の場合、特例が適用されるのは居住用として使われていた部分のみとなります。
店舗部分については控除の対象外となるため、床面積の按分計算などが必要になります。
すべてが対象になると思い込んでいると、想定外の税金が発生することもあるので注意が必要です。
相続した空き家の売却に強い不動産会社を見極める3つのポイント
相続した空き家の売却に強い不動産会社を見極めるためのポイントは、以下の通りです。
- 相続案件や権利関係の調整実績が豊富か
- 税理士や司法書士と連携しワンストップで対応できるか
- 築古物件や再建築不可物件でも対応可能か
ポイント①:相続案件や権利関係の調整実績が豊富か
相続物件は、共有名義人の意思統一が難しかったり、境界が未確定だったりと、トラブルの種を抱えていることが少なくありません。
こうした複雑な権利関係の調整に慣れている不動産会社であれば、揉め事を未然に防ぎ、スムーズな売却をサポートしてくれます。
実績数は信頼の証ですので、ホームページ等で確認してみましょう。
ポイント②:税理士や司法書士と連携しワンストップで対応できるか
特例の適用には税理士の判断が、登記には司法書士の手続きが不可欠です。
不動産会社がこれらの専門家と提携していれば、窓口一つで相談ができ、手続きのたびに別の事務所を探す手間が省けます。
特にセンチュリー21中央プロパティーでは、社内弁護士が常駐しているほか、司法書士や税理士とも密に連携できる体制を整えています。
売却を前提とした相続登記や遺産分割協議などの煩雑な手続きも一気通貫で対応可能なため、複雑な案件でも迷うことなく、スムーズに解決へと進めることができます。
ポイント③:築古物件や再建築不可物件でも対応可能か
空き家特例の対象となる物件は、築年数が古いものが大半です。
中には今の法律では建て替えができない「再建築不可物件」も含まれます。
一般的な不動産会社では敬遠されがちなこうした物件でも、独自の販路や再生ノウハウを持ち、積極的に扱ってくれる会社を選ぶことが、高値売却への近道です。
当社では、「センチュリー21グループ」という世界最大級の不動産ネットワークと、約1,000名の投資家による独自の「オークション制度」により、市場で敬遠されがちな相続不動産でも最高値での売却を目指せます。
まとめ:空き家特例の適用には期限がある!早めの売却相談を
相続空き家の3,000万円特別控除は、要件さえ満たせば税負担を大幅に軽減できる強力な制度です。
しかし、適用期限は「相続開始から3年目の年末まで」と決まっており、書類の準備や解体工事、買主探しを考慮すると、時間的な余裕はそれほどありません。
また、令和6年の法改正によりルールの一部が変更されているため、専門家のサポートを受けながら慎重に進める必要があります。
センチュリー21中央プロパティーは、相続不動産や共有持分、借地権などの難しい案件に特化した、専門仲介会社です。
これまでに4万件以上のトラブル解決・売却をサポートしてきた実績があり、相続不動産の取り扱いノウハウの充実度につきしましては、業界内でも随一です。
社内弁護士が常駐しているため、いつでも法的な観点からの契約書確認やトラブル対応が可能。
また、相談料や仲介手数料のほか、通常高額になりがちな相続登記や測量、残置物撤去等の諸費用も全て0円(売主負担なし)で対応いたします。
「特例が使えるか分からない」「手続きが面倒」とお悩みの方は、まずは一度お気軽にご相談ください。
相続空き家の特例(3,000万円特別控除)に関してよくある質問
相続空き家の特例(3,000万円特別控除)に関してよくある質問と、その回答をいくつかご紹介します。
Q1.相続した空き家を共有名義で売却した場合も特例は使えますか?
A.はい、要件を満たせば共有者それぞれが特例を利用できます。
共有者全員が被相続人の居住要件などを満たしている場合、各人が最大3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)の控除を受けられます。
ただし、家屋全体の売却代金が1億円以下である必要があるため、持分に応じた売却額ではなく、全体の金額で判定される点に注意してください。
Q2.過去に少しだけ賃貸に出していた期間があっても適用されますか?
A.相続開始の直前において、被相続人の居住用であったことが必要です。
過去に賃貸実績があっても、相続開始の直前に被相続人が居住しており、かつ賃貸していなければ適用の可能性があります。
しかし、相続開始時に他人に貸し付けていた場合や、老人ホーム入所後に空き家となった家を一時的にでも賃貸に出していた場合は、特例の対象外となります。
Q3.特例を受けるために、売却代金の下限や上限はありますか?
A.上限は1億円ですが、下限はありません。
売却代金が1億円を超えると特例は使えません。
下限については特に規定はありませんが、譲渡所得(利益)が出ていなければ控除を使う意味がないため、実質的には利益が出ていることが前提となります。

